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家族旅行や遠足で子供の頃行った各地の行楽地や名所旧跡。その後大人になって再び自分の子供を連れて行ったという方も多いことだろう。しかし、そういったかつての定番スポットも、時代の流れの中で、いつの間にか忘れられたり、さびれて休業してしまうケースが多々ある。このコーナーは、そういった「いつの間にか足が遠のいてしまった」スポットを再訪し、その魅力を再発見してみようという企画である。今回はスカイツリー開業でその存在感が危ぶまれる?「東京タワー」の最終回。
天気が良ければやはり特別展望台の眺めは素晴らしい。都心にある分、周囲360度がすべて大都会のパノラマだ。当然だが、子供の頃見た風景とはまるで違う。何が違うかといえば高層ビルの数だ。東京にはこんなに高層建築があったのかと改めて実感。思えば、昔は都心部のどこにいても東京タワーが見えたのだが、今は高層ビルに隠れて見えないことが多い。
大展望台の1階に降りてふと足下を見るとガラス張りの部分が(ルックダウンウィンドウ)。高所恐怖症ならその場で固まってしまうだろう。これがスカイツリーなら高すぎて実感できないかもしれないが、120m程度の高さだと、おおよそ30階建てのビルに相当する。以前37階建ての高層マンションに住んでいた当方にしてみれば、妙にリアリティのある高さなのである。
さて、展望台の内部だが、2階のタワー大神宮(神社)は昔からあるが、1階の展望カフェなどがなかなかお洒落に生まれ変わっている。加えて、Club333 というライブスペースも。夜は照明を落としてそれなりに盛り上がっているようだが、何か若者に媚びてるみたいでイマイチ興味がわかなかった。再びエレベーターでフットタウンへ。
フットタウン3階に、かつては東京タワーの代名詞でもあった蝋人形館がまだ営業しているというので、早速行って見た。「東京タワーといえば蝋人形館」という看板の割には受付のお兄さんが暇そうにしていたが、「写真撮ってもいい?」と聞くと「どうぞ」と笑顔で答えてくれたので、写真を撮りまくってきた。以下はそのごく一部。行ったつもりになって楽しんでいただきたい。
↑ミロのヴィーナス。リアルに再現するとちょっとエロい。
↑往年の映画スター。みんな微妙に似ていない。ジェームス・ディーンはチンピラみたいだし、マーロン・ブランドは栄養不足。三船敏郎はジョン・ベルーシのモノマネ版みたい。外国人から見るとこういうイメージなのだろうか。
↑ホーチミン。きっと今の若者は知らないだろう。
↑東京タワーの生みの親、前田久吉。ホーチミン以上にわからないかも。
↑日本のシンドラー、杉浦千畝。
↑蝋人形の生みの親マダム・タッソー(マリー・タッソー)。波乱の人生を送った人でもある。
↑ダ・ヴィンチの最後の晩餐は、ヒッピーの集会みたいだ。
↑ジミヘンはなかなかの力作。
↑ビートルズは定番中の定番。ジョンがイマイチ似てないか?
↑ロック系はかなり充実。しかしフランク・ザッパとは渋い。
↑ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)とイアン・アンダーソン(ジェスロ・タル)。プログレ系とハードロック系はオーナーの趣味らしく、かなりマイナーなアーティストも。
↑どういうコンセプトか良くわからないコレクションもある。
この日、殆ど客はいなかったが、たまに遠くで笑い声が聞こえる。その気持はよくわかる。とにかくツッコミどころ満載の展示である。1970年のオープン以来、変わっていない展示物もあって、それはそれでなかなか味わい深いのだが、今はお台場のデックス東京ビーチに、ジョニー・デップや浅田真央など最新版の展示があるので、比較してみると技術の進歩を実感することだろう。
それでも、昔見た時のドキドキ感を少し思い出した。映画スターやロックスターなど、今よりはるかに手の届かない世界にいたから「ああ、本物はこんな感じなのか」と素直に感心したっけ。最近はスターもだいぶ身近になり、有り難みは薄れたが。
蝋人形館を出るとロック中心のCDショップがある。ロックスターの人形を見て、修学旅行の中学生がついつい買ってしまうだろうという計算か。昔は同様のコンセプトで映画スターのグッズを売る店があったような気がする。昔も今もあまり売れているようには見えなかったが…。
同じ3階にあるマザー牧場カフェでソフトクリーム片手に一休み。フットタウンには他にも立体映像のSPACE WAX(スペース ワックス)やトリックアート美術館など、観光地にありがちな中途半端なアトラクションがあるにはあるのだが、食指は動かず、そのまま2階の土産物売り場へ。
↑T333Tという東京タワーの新キャラ。イカみたいなノッポンよりは可愛いかも。
↑みうらじゅんの“いやげもの”に紹介されそうなグッズが今でも売られていることに感動。
いかにも外国人向け、浅草チックな土産物も根強く売られており、修学旅行生向けとして定番のメッキ置物も健在だ。ただし、昔のような万年カレンダー付きとか「根性」「努力」といった座右の銘付きは見当たらない。かつてはどこの観光地でも売られていたペナントも激減。その分、若者向けにこじゃれたデザインのお土産が目立つようになってきた。これも時代の流れか。
さて、ひと通り土産物店を眺めて、今回の東京タワーツアーは終了。1Fには「水族館」という名のペットショプ(展示即売している)や各種レストランもあるのだが、それは次回のお楽しみに。帰り際、樺太犬のタロ・ジロ像に挨拶して帰途へ。後で聞いた話だが、この像の撤去が決まり、一部の人が猛反対しているんだとか(実際には別の場所に移転するだけらしいが)。実は一時、スカイツリー移行に伴って東京タワー自体を取り壊す話もあった。予備電波塔として一応の継続は決まったが、文化財ではないので、先行きは不透明だ。昭和を代表する観光地、記憶に留めて置くなら今がチャンスだと思うのだが…。<この項おわり> <前回に戻る>