東京タワーはいま
どうなっているのか(2)

 家族旅行や遠足で子供の頃行った各地の行楽地や名所旧跡。その後大人になって再び自分の子供を連れて行ったという方も多いことだろう。しかし、そういったかつての定番スポットも、時代の流れの中で、いつの間にか忘れられたり、さびれて休業してしまうケースが多々ある。このコーナーは、そういった「いつの間にか足が遠のいてしまった」スポットを再訪し、その魅力を再発見してみようという企画である。今回はスカイツリー開業でその存在感が危ぶまれる?「東京タワー」の第2回。

 そんなわけで実際に東京タワーに行ってみた。東京タワーへのアクセスは地下鉄なら大江戸線赤羽橋、日比谷線神谷町、三田線御成門といった駅が近いのだが、東京タワーというのは意外に高台にあるため、南側から行くと結構急な坂を登らなければならない。運動不足&メタボのアラカンにはちょっとキツイ。

 従って、さほど大差はないが、地下鉄なら神谷町か御成門をお勧めする。バスで行くならタワーの真ん前のバス停(東京タワーバス停)に止まってくれる運行系統が都営バスで5系統あるので、そちらを利用した方が無難だ。

 体力に自信のある方なら増上寺や芝公園、2つのプリンスホテルの敷地を散策するのも良い。芝公園内には芝丸山古墳があって、結構アップダウンのあるコースが楽しめる。また、プリンスホテル側からは東京タワーの全体像が良く見えるので、写真撮影にも絶好のスポットだ。

 東京タワーの足元にはフットタウンという4階建てのビルがある。アラカン読者の皆様は良くご存知かと思うが、くれぐれも、最近できた東京スカイツリータウンのようなものを期待してはいけない。何かアトラクションを見学して「金返せ!」などと騒いでもいけない。ましてや、展望台に登って「やっぱりスカイツリーの方が…」などと呟いてもいけない。

 東京タワー&フットタウンにはそれなりの楽しみ方がある。私が行ったのは平日の午前中で、まるっきり閑散としていたのだが、どこに行っても人だらけの観光地に辟易している人は、こういう機会にタワーに行って、案内のお姉さん達の営業用の笑顔を独占するのも、たまにはいいんじゃないだろうか。

 とりあえず展望台にでも行こうかということで、チケットを買おうとしたのだが、どこを捜しても見あたらない。ふと気がついたらそこはフットタウンの2階だった。私は赤羽橋側から来たので、入り口が大型バス駐車場側の2階だったのだ。要するに、このビルは傾斜地に建てられているため、段差があるのだ。団体バスなどで来た人は、1階の入り口から入って、この2階入り口から出るのかもしれない。その証拠?に入るとすぐ目の前に土産物屋が並んでいる。最初に買うと荷物になるから、最期に買ってからバスに乗ってね、ということか。なかなか巧みな導線だ。

 よ〜く見ると、展望台へのエレベーター乗り場は1階ですと案内に書いてある。私はそそくさと階段で1階に降りた。なるほど、降りてみると広々としたエントランスにエレベーターがあって、案内のお姉さんが居並び、行列を整理するためのテープが張られている。この日はあまりにもガラガラで、何の意味も為してはいなかったが。

 しかし、肝心のチケット売場がない。仕方なく近くのお姉さんに聞くと「チケット売場は外になります」と満面の笑み。嫌味で言っているのではない。このビルのスタッフはみな愛想がいい。キチンと教育されているのが良くわかる。

 チケット売場が外にあるのは、まず外で順番にチケットを買わせ、エントランスでも順番にお行儀良く並ばせるためだ。そうしないと、エントランスに人が溢れ、エレベーターのキャパシティに混乱が生じる。これは効率よく大量に人を運ぶための導線設計なのだ。ちなみに、降りる時はフットタウンの4階に出るから、登りの行列とはち合わせることもなく、スムーズに人が流れる。しかも、1階に降りるまで、イヤでも全フロアを眺めることになる。う〜ん、よく考えられている。そんな事に感心するヤツは私だけだとは思うが。

 ちなみに、スカイツリー同様、東京タワーには展望台が2つある。地上150mの大展望台と、250mの特別展望台だ。大展望台が大人820円、特別展望台が600円、両方で1,420円になる。両方見るから割引しろ、と言っても通じないので悪しからず。営業時間は朝9時から夜10時まで(特別展望台は9時30分まで)。十分に夜景も堪能できるというわけだ。

 ここまで来たら両方見るしかないだろう、ということで大枚1,420円をはたいた私は、まるで出征兵士のように、お姉さん達の熱い視線に見送られて大展望台へと向かった。エレベーター内は何やらカラフルな照明がついていて、外の景色も見えるので一気にムードが高まる。大展望台に到着した私は、上昇機運?に乗ってそのまま特別展望台へと向かった。

 2つめのエレベーターに乗るには、少しばかり階段を登らなければならない。登り切るとこぢんまりしたエントランスがあり、そこから再びエレベーターに乗る。私はたまたま入ってすぐの、ドアの左側に乗ったのだが、何とエレベーターの窓からちょうどスカイツリーが見える。役目を終えて悠々自適の兄の方から、今が盛りと頑張っている歳の離れた弟をしみじみ眺めるというのも、なかなかオツではないか。

 このエレベーターは上がる途中に何らかのジャンクションがあるようで、一瞬ガタンと音がして微妙に揺れるのもちょっとスリルがあって、高所恐怖症のカップルなら、愛が深まることうけあいだ。ほどなく到着してドアが開くと、目の前にはこんな風景が開けていた(写真下)。 <前回に戻る><次回に続く>