第三章:花曇りにホット一息・京の珈琲

京都人はコーヒー大好き

 実は私、コーヒー好きなんです。というより“依存症”に近いかも。家にいても朝・昼・晩と欠かしたことはないし、母も姉も大のコーヒー党。だから家族で出かけたときは、1時間も経たないうちに必ず誰かが「ねぇ、どっかでコーヒー飲まない?」って言い始めます。

 そんな私なので、編集長から「前回神戸のコーヒーを特集したから、時間があったら京都のコーヒーについても取材してきて」と、有名コーヒー店のリストを渡された時には心のなかで思わず小躍りしちゃいました ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿

←写真上から「イノダコーヒ本店」と店内、「六曜社地下店」、「喫茶葦島」店内

 でも同時に「京都でコーヒー?」っていう素朴な疑問が浮かんだのも確か。京都って言えば以前この「アラカン」で舞風さんが取材なさっていた「お茶」のイメージが強くないですか…?

 というわけで、私なりにいろいろ調べてみたら、何と総務省の統計による「日本の県庁所在地&政令都市のコーヒー消費ランキング」(平成23〜25年平均)では京都市が堂々の1位! 内訳は年間コーヒー消費量が3,330g、購入額7,588円だそうです。全国の平均が2,241g、5,315円ということですから、いかに京都市民がコーヒー好きかがわかりますよね。

おウチの味はプレミアム

 いただいたコーヒー店リストの1番目にあったのが、「イノダコーヒ」さん。こちらのコーヒー(この場合、コーヒって言うべきなんでしょうか?)、実は我が家でもお取り寄せしているんですよ。東京駅の大丸や横浜の高島屋にもお店があるので、行かれた方も多いかと思います。本拠地である京都には合わせて6店舗。どうせ行くなら本店がいいということで、早速“堺町通三条下ル”(京都の住所って、なんだかそのまんま道案内みたいですよね)の本店にお邪魔しました。

 お店の向かって右側はいかにも京風の町家造りですが、左側は洋風。京都のお店ってさりげないところがお洒落ですよね。しかも街並みに程よく溶け込んでる。お店の中は意外に広くて、全部で205席。今どき禁煙席(94席)より喫煙席(111席)の方が多いというのが昔の喫茶店っぽいですよね。メニューを開くと、思いの外フード類が充実。ちょっとつまんでみたくなったけど、お昼前なので我慢。このお店の看板メニューは何と言っても最初から砂糖とミルクが入って出てくる「アラビアの真珠」ですけど、今日は家でよく飲んでいるストロング系深煎りブレンドの「プレミアム」に。一口飲んで「あ〜、おウチのコーヒーだ…」。普段通りの味にちょっと安心。

 続いて伺ったのが三条通から少し下がった河原町通にある「六曜社地下店」さん。「地下」というからには当然「地上」もあるわけで、1階のお店は普通に「六曜社」さん。両方ともコーヒー専門店なのですが、使っている豆は違うそうです。このお店のファンである編集長のお話では、どちらも美味しいけど、地下の方が「重め」で、1階の方がやや「軽め」なんだとか。どちらが上というより、あくまで個人の好みによるということでした。

ドーナツはママの味

 ストロング系大好きな私は迷わず地下の方へ。お店の中はちょっと薄暗くて、年代物のカウンター席とソファー席があって、典型的な昭和の喫茶店という感じ。肝心のコーヒー(ブレンド)はというと、最初の飲みくちは雑味がなくてスッと入っていくのですが、後からジワッと濃厚な香りや苦味が口の中に広がります。酸味はほとんどなくて、これは私好み (^^ゞ

 コーヒーを味わいながら、カウンター内のケースにドーナツが入っているのを目ざとく発見。試しに注文してみたら、素朴で凄く懐かしいお母さんの味。なんだか和むなぁ。ちなみにこちらのお店、昼間は喫茶店ですが、夜になるとバーに変わるそうです。

写真上から「祇をん ひつじカフェ」とフレンチプレスで淹れるコーヒー、「花梓侘」のつまみ寿し15貫→

就寝前の特別な一杯

 次にご紹介するのが六曜社さんから目と鼻の先。三条河原町交差点の雑居ビル5階にある「喫茶葦島」さん。編集長リストでもダントツ一押しのお店です。看板があるにはあるのですが、外からだと本当に何気ない、目立たないところなので、初めて行くときはちょっと迷うかも。

 期待と不安の中、エレベーターを降りると、そこはもうお店の中です。第一印象は、全体にゆったりとしていて、シックでエレガント。間接照明の柔らかな光のなかで白木のテーブルとソファー、大きなカウンターが温かみを感じさせます。そして、印象的なのが各所にさりげなく置かれた金属製のオブジェ。

 これは期待できるかも…。ちょっとハイな気分でメニューを開くと、真っ先に飛び込んできたのが「百年珈琲」の文字。そういう名前の焼酎なら聞いたことあるけど(「百年の孤独」でしたっけ?)、「百年」とまで言うからには余程の自信作なのね。よ〜し、それなら飲んでやろうじゃないの。値段は結構高いけど(750円)…。

 それからカウンター席でコーヒーを淹れるのを眺めていたのですが、今まで数えきれないほど喫茶店やカフェには行ったけど、そんな私でも初めて味わう妙な緊張感。このテンションはどこから来るの? って思っていたら、どうやら目の前のマスターらしき方が発しているみたい。このお店、普通のペーパードリップなんですけど、淹れ方が物凄く独特というか儀式的というか、「茶道」があるなら「コーヒー道」もあっていいだろう、みたいな感じ。

 だって、1杯分のブレンドでも、ひとつひとつの豆をいちいちその場で調合して、挽いてから淹れるんですよ。その豆の入っている容器も、お湯を捨てるための水盤のような容器も純白の陶器で、そこから長い茶さじのようなもので定量を計って、挽いて、紙を濡らして、そのお湯を捨てて、豆を入れて、蒸らして…といった一連の動作が、まるで「お作法」のようで、思わず見とれちゃいました。

 きっと、そんな風に手間をかけながらも、ひっきりなしに入ってくるお客さんに対応するために、一連の流れるような動作が身についたのだと思います。で、肝心のお味はというと…。う〜ん、さすが。この深みとコクは独特ですね。人によっては「濃すぎる」「苦すぎる」なんて言うかもしれないけど、私にはその個性が極上に思えます。夜、寝る前の、一日で一番リラックスしたひとときに味わいたい一杯。

アツアツで後味すっきり

 さて、お次は市街地から少し離れた世界遺産・下鴨神社から下鴨本通りを北に向かって行くと、北大路通より少し手前にある「カフェ ヴェルディ」さん。こちらのお店は自家焙煎なので、近くに来るとコーヒーのいい香りがします。こちらも編集長のご贔屓で、豆をお取り寄せしているとか。これまで飲んできた京都のコーヒーは、かなり重い感じでしたが、こちらは東京のある有名店で飲んだコーヒーに衝撃を受け、むしろ軽くて後味がスッキリした、雑味のないコーヒーを目指して2003年に開店したということです。

 飲んでみた感想は、まさにスッキリ。最初は芳醇な香りとほのかな酸味を感じますが、その後がさわやか。いろんな意味でバランスが良い一杯ですね。編集長の話ではカレーなどのホットサンドも美味だとか。今度また行けたら是非食べてみたいですね。あ、そうそう。こちらでもうひとつ感心したことがあるんですよ。それは丁寧で優しい接客。コーヒーを淹れる温度は80度前後がいいっていいますけど、こちらではそれを温めて「アツアツ」でお願いすることもできるんです。取材当日のような寒い日には嬉しいサービスですよね。

 さて、コーヒー取材のラストは祇園の隠れ家っぽいカフェ、「ひつじカフェ」さん。ここは中心に池とお庭があって、その周囲に飲食店があるという変わった区画。ここも私のような”京の街初心者”(友人がいるので嵐山なんかには結構行くんですけど…)が見つけるのは大変かも。

 お店の中は、いかにも町家カフェという感じ。黒いソファーと白い壁の落ち着いた空間です。メニューを見て真っ先に飛び込んできたのが一口サイズのミニシュークリーム。でも、今回はコーヒーの取材なのでちょっと我慢(お土産に買って、東京に帰ってからいただきました)。で、こちらのコーヒーなんですが、何とフレンチプレスで淹れるんですよ。しかも紅茶みたいに砂時計付き。日本ではペーパードリップが一般的ですが、欧米ではむしろフレンチプレスが主流なのだとか。雑味まで入ってしまうという欠点はありますが、コーヒー本来の香りを逃さないという利点もありますよね。

春の味覚も堪能しましたよ♪

 …とまぁ、あまりにコーヒー好きなのでコーヒーの話ばかり長くなっちゃいました。最後に京都のおいしいものもご紹介しないと。やっぱり春だから、春の香りがするものを食べたいですよね。最初にレポートした半木の道から歩いて2分、閑静な住宅街の中に、「花梓侘 (かしわい)」という普通の民家のようなお店があります。作家・柏木圭一郎さんの奥様がオーナーということで、高い美意識と趣味性を感じる店構え。

 で、ここのお料理が素晴らしいんです。関西によくある手鞠寿司、そのミニ版が仕切られた重箱の中に綺麗に並んでいるの。しかもひとつひとつ違う山海の食材を使っていて、それに合わせてトッピングする食材も絶妙。女の子だったら一目見ただけで絶対感激するはず。それに湯葉とか生麩とか赤い近江こんにゃくとか、関西の味覚をいっぺんに味わえるのも魅力。

←写真上から今が旬の筍、烏丸御池の「亀甲屋」店内(ちょっと酔ってます)、祇園・花見小路の「橙」店内(奥に見えるのがご主人です)、おみくじを読む私(目が真剣で怖い)

 そして、今回の取材で一番良く食べたのが竹の旬と書く筍(たけのこ)。その通り旬の食材ですよね。三条通のお店でみかけた朝堀りの筍は1本数万円の値札がついていてビックリ。筍は京名物でもあるので、専門店もたくさんありますけど、今回は先斗町の三条側にある編集長行きつけのおばんざいやさん「ひめごぜん」さんや、4,000円で季節のコースが味わえる烏丸御池の「亀甲屋」さん、やはり編集長ご贔屓の祇園花見小路「橙」さんで様々な筍料理をいただきました。特に「橙」さんでは今シーズン最後というお店の看板料理「甘鯛(ぐじ)の蕪(かぶら)蒸し」まで味わえて超ラッキー♪

 そんなこんなで、あっという間の三日間。飲んだり食べたりばかりでは叱られそうなので、今回の取材旅行の締めくくりに、祇園の八坂神社に行ってお参りしてきました。おみくじも引いてきましたよ。結果はヒミツですけど (^^) でも、八坂さんは縁結びの神様。読者の皆様と良いご縁があればいいですね。こんな私ですが、これからもよろしくお願いします。<次回をお楽しみに>