第三章:鏡面を滑るカヌー〜大沼公園と美食天国

手付かずの自然

 JR函館駅から特急「北斗」「スーパー北斗」で約20分、車なら40分の場所に広大なほぼ手付かずの大自然がある…。さすがは北海道ですよね。それが大沼国定公園。標高1,131 mの活火山、駒ヶ岳とその西麓にある火山湖の大沼、小沼、じゅんさい沼を含めた一帯を指すそうです。湿地帯は2013年に日本で34カ所目のラムサール条約湿地になりました。

 今回、大沼公園観光の拠点に選んだのがクロフォード・イン大沼。ちょうどJR大沼駅の裏側にあって、閑静で緑豊かな立地。アメリカの家庭をコンセプトにしているそうですが、確かに、湖畔の別荘として映画に出てきそうな雰囲気。フロントの脇に巨大なムース(ヘラジカ)の剥製があるんですよ。私はアメリカに住んでいた頃からムースが大好きなのですが、こんなに大きいのを見たのは初めて。オーナーがカナダから取り寄せたのだそうです。

 ホテルに着いた時にはすでに日が暮れ始めていたので、公園を楽しむのは翌日にお預け。その代わり、優雅なフレンチディナーを楽しみました。駒ケ岳ポークのソテーとか、大沼牛のビーフシチューとか、食材はほとんどが地元産。特に、蓴菜沼で採れたじゅんさいが凄く大きくてビックリ。海の幸も山の幸も地元ですべて揃うのが北海道の魅力ですよね。こちらのレストランは食事だけの利用もできるので、公園を散策しながらのちょっとしたランチにも最適です。

 明日の予定を決めようと食事の後フロントで聞いたら、大沼公園ではカヌーや乗馬といったアクティビティが豊富だとのこと。前日の予約がベストということで、まずは牧場に問い合わせると残念ながら予定時間が満杯だったので、カヌーの方に電話すると、こちらは即座にOK。朝9時から2時間のコースに挑戦することになりました。

←写真上からクロフォード・イン大沼、ロビーにあるムースの剥製、雄大な駒ケ岳、コウホネ、エゾヒツジグサ

 翌朝の朝食もボリュームたっぷり。日差しがたっぷりのレストランからは湖を眺めることもできます。広い庭には小鳥やリスもやってくるとか。予約したイクサンダー大沼カヌーハウスまでは、ホテルから車で5分の距離。小沼に面した可愛らしいカントリーハウスです。到着すると早速、貴重品はロッカーへ。ライフジャケットを着込んで、カメラやスマホは防水バッグに入れ、いざ出発。実は私、アメリカで(多少ですが)カヌーの経験があるんです。2人乗りの場合後ろに座るほうが舵を取るので、若干のコツが要るのですが、私が経験者ということで有無を言わさず後ろに。男女のペアの場合、普通は男性が後ろなのだそうですが…。

 今回のインストラクターは、函館出身でベテランの佐藤さん。最初に丁寧な説明を受けてから漕ぎ始めるので、初心者のかたでも安心です。この日はほぼ無風状態で絶好のコンディション。「こんなに風のない日は15年に一度ぐらい」と佐藤さん。最初は慣れなくてカヌーが蛇行していましたが、慣れてくると鏡のような水面を一直線に、滑るように進みます。葦が茂る浮島を過ぎると、雄大な駒ケ岳が目の前に。この瞬間が最高ですよ。

 駒ケ岳は記録されているだけでも寛永17年(1640年)、安政3年(1856年)、昭和4年(1929年)に大爆発を起こしており、近年の平成8年にも小噴火を起こしたりと、現在でも現役バリバリの活火山です。爆発で吹き飛んだ山頂は、安政火口など3つの火口を中心に、剣ケ峰(標高1,131m)、砂原岳(1,113m)、隅田盛(892m)の3つからなり、ゴツゴツした男らしい姿。駒ケ岳という名前が全国にたくさんあるので、一般には区別するために北海道駒ヶ岳とか渡島駒ケ岳、蝦夷駒ヶ岳といった呼び方をするそうですが、地元では普通に駒ケ岳と呼んでいるようです。

水上の花畑

 駒ケ岳を横目にさらにカヌーを進めると、水面に可憐な黄色い花畑が広がっているのが見えてきます。これって黄色い睡蓮? でも、まだ満開ではなくて、みんな蕾状態…。なんて思っていたら、「コウホネ」というスイレン科の植物で、この状態で満開なのだそうです。コウホネという名前の由来は、白い根茎が動物の骨のように見える(河骨)からだとか。茎は漢方薬(解熱、鎮痛)にも使われるそうです。

            上から岸辺でコーヒーブレイク、初単独カヌーの勇姿?→

 一方で、私たちが普通に「睡蓮」とか「蓮の花」と呼んでいる種類に近い純白の花を咲かせるのが「エゾノヒツジグサ」。羊のように白いからではなくて、未の刻(午後2時頃)に咲くからついた名前なのだそうです。午後6時頃には花を閉じるのですが、その開閉を3日間繰り返すとか。植物って神秘的ですよね。

 岸辺の枝の下を潜っていったり、ジグザグ走行を楽しんだりと、だんだんとカヌーの扱いに慣れてきた頃、岸辺でちょっと休憩、美味しいコーヒーを淹れていただきました。さわやかな青い空、湖面に映る駒ケ岳、間近に聞こえる鳥の声…。北海道に来たな〜って感じで、アウトドア気分満喫! 

 するとインストラクターの佐藤さんから「お姉さん、なかなか上手いねぇ。今年の女性ナンバーワン。明日からウチで働けるよ」と、お褒めの言葉。確かに自分でも結構うまく漕げたかなと思っていたので、ちょっと照れながらも嬉しい気分。「じゃあ、一人で漕いでみる?」とのお誘いに応えて、初めて一人で漕いじゃいました。うまく出来たかどうかは動画で見て下さいね。

 それにしても、こんなに無垢で手付かずの自然があって、カヌーひとつでその素晴らしさを体感できることに驚きました。ふと空を見上げると、鳶が悠々と弧を描いています。この一帯は野鳥の楽園でもあるんですね。

動く水上レストラン

 2時間たっぷり遊んで、カヌーハウスを後にする頃にはお昼近くに。この日のランチは湖畔のリゾート・レストラン「ターブル・ドゥ・リバージュ」さん。駐車場に入る途中で、絶景ポイント発見! 駒ケ岳をバックに、湖面にエゾヒツジグサが群生しています。まるで理想的な風景画みたい。レストランの周囲もエゾヒツジグサが一面に咲いていて、アーチ橋越しに見る景色はモネの名画のようです。

 レストランの周辺にはいくつもの小さな島があって、橋で繋がれているので、気軽に散策することができます。1時間ぐらいで一周できるみたいですよ。野鳥好きな人や植物好きな人は、ぜひ双眼鏡やカメラを持って出かけてくださいね。

←写真上からレストラン近くの絶景、ターブル・ドゥ・リバージュ、同店のランチクルーズ、山川牧場の赤ちゃん牛

 こちらのレストラン、予約をすると湖上をクルーズしながらランチやお茶が楽しめるんですよ。その際客席になるのが、いかだ状のボート。2,600円で約30分、ランチプレートとコーヒーがいただけます。朝食をしっかり採ってはいたのですが、カヌーを漕いでお腹が空いていたのでペロリといただいちゃいました。それにしても湖を渡る風の心地さといったら…。この日2回めの“アウトドアコーヒー”も最高でした。

 大自然の懐に抱かれて、すっかり癒やされた私。帰り道で「ソフトクリーム」の看板を見つけ、思わず進路を変更して立ち寄ってしまいました。夏の北海道に「ソフトクリーム」は定番ですよね。何しろ牧場直営ですから、味が濃くて美味しいことは間違いないし…。行ってみると「山川牧場ミルクプラント」の看板が。ソフトクリームはいろんな種類がありましたけど、私は迷わずバニラ。牛乳の美味しさが一番良くわかりますからね。

 食べてみて大正解。やっぱりソフトはカラッとした北海道の気候にピッタリ。お隣は牧場の敷地だな、と思っていたら「子牛のアパート」の文字が飛び込んできました。興味津々で行ってみると、何と、生まれたばかりの牛の赤ちゃんが何頭も! そのうちの1頭、ジャージー牛の赤ちゃんがこちらに気がついて、尻尾を振って近づいてきました。何て人懐こいの! それにその澄んだ瞳。思わず吸い込まれそう。あんまり可愛いから触れてみたくなったけど「病気の原因になるので触れないで下さい」との文字が。そうよね、都会で汚れた指で触ったりしたら病気になっちゃうよね。あなたはここの澄んだ空気と綺麗な水と、無垢で優しい人達に囲まれてすくすく育ってね。

生け簀でも皿の上でも…

 というわけで、今回の函館・松前の旅はいかがでしたか? 街歩きも、夜景も、歴史探訪も、大自然もすべて楽しめる贅沢な旅になりました。カヌーも、幼児から90歳のおじいちゃんまで実績があるそうなので、是非チャレンジしてくださいね。たまに転覆する人もいるそうですが、小沼は凄く浅いので、溺れる心配はありません。但し、気をつけていないとデジカメやスマホを落として涙目、というケースもあるそうですが…。

写真上からラッキーピエロ五稜郭公園前店、同店人気ナンバーワンのチャイニーズチキンバーガー、函館・海光房でいただくサッポロクラシック→

 最後に今回もとっておきのグルメをご紹介しますね。まずは、函館市内では至るところで目にする派手な看板が「ラッキーピエロ」さん。一応ハンバーガーショップということになっていますが、お店によってはラーメンなどの中華メニュー、鉄板焼きやパスタ、カレー、オムライスなどの洋食メニューもあって、メニュー表を見ただけで目が回りそうになります。ハンバーガーも、人気ナンバーワンのチャイニーズチキンバーガーを始め、土方歳三ホタテバーガーとか、イカ踊りバーガーとか、内容が想像できないものもたくさん。

 作り置きをせずに注文を受けてから揚げたり焼いたりするので、ファストフードではないというのがお店のこだわり。また、店内の装飾もユニーク過ぎて言葉にできません。なんでも、内装のコンセプトはお店によって全部違うそうですよ。でも、このボリュームと安さは圧倒的。函館近辺に17店舗あって、それぞれが個性的。オリジナルグッズなんかも豊富にあって、マクドナルドなどの国内大手4社の店舗を全部合わせても敵わないというのも納得です。

 続いて、北海道といえばやっぱり海の幸。新鮮な魚介をリーズナブルに堪能できるということで、函館でも屈指の人気店が「海光房」さん。函館朝市の一角にあって、アクセスも便利です。

←写真上から海光房の活きいか刺し、うに釜飯、レストラン矢野のまぐろ御膳

 実を言うと私、蟹とホタテが苦手なんですよ。じゃあ、何をしに北海道に行ったの?って言われそうですが、私のようなワガママ女子でも受け入れてくれるのが北の大地の寛大さ。「海光房」さんには大小さまざまな生け簀があって、蟹も海老もカレイもイカも跳ねまわって盛んに自己アピール?しています。もちろんお皿の上でも…。この日私がいただいたのはお刺身の盛り合わせに活きイカにつぶ貝にアスパラに生牡蠣にうに釜飯に…。ごめんなさい、あんまりたくさん食べたので全部覚えてません。でも、これだけはしっかり覚えてますよ。サッポロクラシック、最高でした。

 松前にも美味しいお店があります。温泉旅館・矢野に併設された「レストラン矢野」さん。松前産の本マグロや蝦夷アワビ、ウニなどの高級食材が、落ち着いた雰囲気の中でリーズナブルにいただけます。でも、ちょっと気になったのが手摘みの岩のりをふんだんに使った「のりだんだん」というお弁当と、松前漬を使ったチャーハン、パスタというメニュー。しかも女将手作りの松前漬と若女将手作りの松前漬があるみたい。今回は食べられなかったけど、次回チャンスがあったら絶対食べてみたいな。<次回をお楽しみに>