第三章:花と動物に癒やされる〜那須

いろんな意味で?全国区

 第一章で「いろんな意味で? 全国的に有名な宇都宮動物園にも行った」とお話しましたが、その「いろんな意味」なんですが、この動物園、どこを取ってもユニーク過ぎてなかなか説明が難しいんです。

 大きな特徴として、まず民営であること。ライオンなど一部の猛獣を除けばほとんどの動物に直接エサ(おやつ?)をあげられること(飼育員の帯同が必要な場合もあります。エサは入場口で一袋100円で販売)。何ともレトロな遊園地が併設されていること、釣り堀を兼ねたプールがあること、何のために造ったのかわからない天守閣があること、ウルトラマンや仮面ライダーなど、70年代のキャラクターが現役で活躍?していること、意味不明な動物のオブジェが各所に見られること、地元の飲食店などの手描きの広告があちこちに見られること…。ちなみに、園長は人間とネコ。

 ネコ園長は、かつて園の前に置き去りにされた捨て猫だったそうです。クリスマスの朝に拾われたので、名前は「さんた」。この日は、園内のパトロールに疲れたのか、入り口で昼寝していました。

←写真上からホワイトタイガー、ヤギ、キリン、キッチュな動物のオブジェ、なかよしランドではモルモットなどの小動物を抱くこともできます

 アクセスは、宇都宮市街の中心部から車で20〜25分ぐらい。日光街道を日光方面に向かい、桜並木を過ぎてちょっと右手に逸れた田園地帯にあります。駐車場に置かれたポンコツ感むきだしのロボットに、早くも脱力…。

 入り口で料金を支払い、エサを買うと、左手には開園を控えたプール(冬季は釣り堀)、右手にはレトロ過ぎる遊具の数々、奥には黒塗りの天守閣が見えてきます。すでにこの時点でカオス全開…。動物園に入ると、すぐにホワイトタイガーの檻が見えてきます。この動物園には不似合いな(失礼…)美しさ。去年の4月にデビューしたんですね。名前はアース。なんだか、地方の2部リーグに雇われたメジャーリーガーみたいな違和感がありますが、さすがにメジャー選手、他のライオンやトラが寝ていても、しっかり起きて愛嬌を振りまいています。プロ根性あるなぁ。

あげたいけど怖い…

 その右手にはハイエナやオオカミの檻が。かなり間近で見られるので、じっくり観察できます。ハイエナってダーティーなイメージだけど、よ〜く見ると、結構可愛い。お隣のライオンの檻は、つい先日雄ライオンが1頭亡くなったそうで、何となく淋しげ。さらにその奥にはクマさん。猛獣は猛獣同士で十把一からげっていうアバウトな感じが堪りません。どうせならもっと奥に置いたほうがスター感が出ると思うんだけど…。

 さらに進むと、キリンさんが首を降ろしてお出迎え。どうやらエサをねだっているみたい。中央に上り台があったので、そこからあげるのかと思ったら、飼育員さんいわく「首が届くならどこであげてもいいですよ」だって。他の人があげるのを少し離れて見ていたら、首が届くのはいいんだけど、長くて黒い舌がビロ〜ンって伸びて、エサを持った人の手のひらをペロリと舐めるのを目撃。

 わあ〜、これは嫌だ。あげた人も嬉しいような困ったような複雑な顔をしています。でも、こういう機会って滅多にないと思うので、あげてみたい。いや、やっぱり舐められるのはダメ。でも、あげてみたい…。

 しばらく悩んだ結果、あげてみることに。できるだけ舐められないように、人参の先をつまんでキリンさんに合図。グ〜ンと近づいてくる顔が大きくて、ちょっと怖い。でも、キリンさんが口に入れた瞬間に手を離して、何とかセーフ。たったそれだけのことなのに、凄くドキドキ。気が付くと、ただ一人おっかなびっくりの私は周囲のお客さんから注目の的。あ〜、恥ずかしかった。

 大型動物との接近遭遇に少し慣れてきたので、今度はゾウさんに挑戦。一見、遠くにいて届かないように見えるのですが、ここはゾウと人間の連携プレー。ゾウさんは鼻を思いっきり伸ばし、人間も柵ギリギリに体を伸ばせば、何とか届くんです。ゾウさんは鼻を上手に使って、鼻先でエサをくるりと丸め込むんですね。もっとも、こんな小さなエサじゃ、ゾウさんにはお腹の足しにならないでしょうけど…。

 ここで気がついたのですが、この動物園では、器用にエサを受け取れる動物こそがスターなんですね。奥にいるおサルさんも、手足で届かないエサを起用に尻尾で掴んで見せてくれます。歩いている途中で、急に機嫌が悪くなった? ライオンが吠えまくったり、ストレスが溜まった? チンパンジーが鉄の扉をガンガン叩いたり、良くも悪くも野性味あふれる姿をそのまま観察できます。そして、そんな大騒ぎにも全然知らんぷりで居眠りを決め込む動物たちにも驚かされます。

 「図鑑を見ただけでは分からない、動物の大きさ・におい・温かさなど、実際に見て触って感じてもらうこと」というのがこの動物園のコンセプトなのだとか…。確かに、リスザルの檻などは人間が入れるようになっていて「糞やオシッコが落ちてくることもあります。気合を入れて入ってください」という笑えない張り紙が…。とにかくこの動物園、全国的に人気なのもわかるような気がします。特に小さなお子さんを連れてきたら、忘れられない経験になるんじゃないかな。

おやつをあげようと手を伸ばすと、ゾウさんも精一杯鼻を伸ばして受け取ってくれます。ちなみにゾウさんはアジアゾウ ↓

大型犬に囲まれるシ・ア・ワ・セ

 さて、最終日は栃木県を代表する高原リゾート、那須へ。最初の目的地は、前々回の神戸でも目一杯楽しんだ「どうぶつ王国」です。飼育されている動物の種類はさほど変わりませんが、こちらの特徴は広大な敷地を活かした“放牧”スタイル。動物たちがストレスなくのんびり過ごせる上に、大型の鳥が大空を自由に舞う、バードパフォーマンスショーのような珍しいアトラクションもあります。

 でも、入り口のゲートを通って、真っ先に私の目に飛び込んできたのは大型犬と触れ合える「ふれあいドッグパーク」。家では小型犬は飼っているのですが、大型犬は飼ったことがないので、触れ合ってみたかったんですよね〜。ざっと見ただけでもコリー、サモエド、ラブラドール、ラブラドールレトリバー、ニュージーランドハンタウェイ、アイリッシュセッター、バセットハウンドと、ワンちゃんの見本市みたい。ほとんどのワンちゃんが爆睡中でしたけど…。

 真っ白でふわふわの毛が気持ちよさそうなサモエドちゃんは、飼育員のお姉さんがブラッシングしようとすると全身で拒否。「この子、これが嫌いなんですよ〜」とお姉さん。すっかりふて寝状態のサモエドちゃんに、しびれを切らしたお姉さん「アンタ、ダメでしょ。寝てばっかりじゃ。やる気あんの?」と言うと「ワン!」と、思いの外元気な返事。「それともやる気ないの?」「ワン!」「どっちなの?」「ワン!」と、まるで漫才みたいな掛け合いに思わず爆笑。

 ワンちゃんたちがなかなか起きてくれない中、最初に近づいてきてくれたのがアイリッシュセッターのココアちゃん。茶色くて長い毛足が素敵。透き通った瞳もきれい。愛おしくて、思わず抱きしめちゃいました。

上からふれあいドッグパーク(動画)、大きさに圧倒される王国ファームのアンデスコンドル、生後3ヶ月のアルパカ・雪丸くん、ウマやアルパカにはエサをあげられます→

 気がつくと、他のワンちゃんたちも起きてきて、大型犬に囲まれた私は至福のひととき。ここには他にもたくさんの動物がいるのに、結局、私はこのコーナーとドッグショーだけでほとんどの時間を使ってしまいました。屋内にはネコちゃんや小型犬と触れ合えるコーナーもあるので、ワンちゃん、ネコちゃん好きの方なら死ぬほど癒やされますよ。ウサギちゃんと触れ合えるコーナーでは思わずフワフワのアメリカンファジーロップと見つめ合ってしまいました。その様子は動画で。

天使のような雪丸くん

 主に屋内施設が中心の「王国タウン」には、神戸でも触れ合ったカピパラやマーラの他、ヤマネコやレッサーパンダ(檻がなく、すぐ間近で見られます)、ペンギン、珍獣ビントロングなどに出会えますが、屋外施設が中心の「王国ファーム」へはクラクションが鳴き声というイヌバス、ネコバスを使って移動。ファームではアルパカ、ウマ、ヒツジ、ラクダ、トナカイなどの他、ハクトウワシやアンデスコンドルなどさまざまな大型猛禽類を間近に見ることができます。

 中でもバードパフォーマンスショーは圧巻。翼長2メートルのゾウゲンワシの迫力の狩りや、最速と言われるハヤブサのスピード、なかなかお目にかかれない、美しいコンゴウインコの飛行など、次々と繰り広げられる鳥たちの勇姿に、目は釘付け。

 そして、この「ファーム」にも癒やしの天使が…。今年の2月に生まれたばかりのアルパカの赤ちゃん「雪丸」くん。ちなみにお母さんの名前は「小梅」ちゃん。ちょっとおどおどしながら近づいてくる様子は、めちゃくちゃキュート! 健康ですくすく育ってねと願う反面、このままでいて欲しい、大きくならないで欲しいという矛盾した気持ちも…。皆さん、天使のような雪丸くんに会えるのは今だけですよ!

5月は一斉に花開く

 動物たちに癒やされたあとは、このコーナーのもうひとつの“目玉”企画、季節の花のご紹介です。ミュージカル「回転木馬」のナンバーに「6月は一斉に花開く(June Is Bustin' Out All Over)」という名曲がありますが、日本ならさながら「5月は一斉に花開く」っていう感じですよね。春の桜やチューリップが先陣を切ったあと、鮮やかに山肌を染めるシャクナゲやツツジ、その後のバラは“王者”の風格。

 那須は高地なので、花々は都市部よりも少し遅れて咲くようです。この日向かったのは「那須フラワーワールド」。どうぶつ王国とは目と鼻の先です。エントランスを抜けると、そこは別世界。一面のポピーの花が、目の届く範囲を埋め尽くし、5月のさわやかな風にそよいでいます。小高い丘を登っていくと、今年は暖かったせいか、チューリップはすでに終わってしまったようでしたが、代わりにネモフィラやルピナス、もう少しで満開になりそうなバラの花が迎えてくれました。

←手入れの行き届いた那須フラワーワールド

 私は、まだまだ見頃のツツジの前でひと休み。すぐ近くで、係の方が雑草を取ったり、肥料をあげたりと、心を込めて花のお手入れ。花は人を裏切らない。手をかければかけるほど美しく咲くっていいますけど、本当ですね。街角のどんな小さな花畑でも、誰かの目に見えない努力と愛情が注がれているんですよね。今のところ、そんな誰かが咲かせた花を見るばっかりで、園芸にはあまり興味のない私ですけど、アラカン世代の皆さんが言うように歳を取ると、土いじりを始めたりするのかなぁ…。

 さて、フラワーワールドを後にして、遅めの昼食へ。那須といえば牧場でも有名ですよね。今回私が選んだのは南ヶ丘牧場。まずは、白河郷の旧庄屋家屋を移築したという「お食事処 庄屋」さんへ。名物ペロシキ(ピロシキ)の付いたボルシチセットも美味しそうでしたが、この日私が選んだのは「おろしつゆハンバーグ膳」。結構なボリュームでしたが、お腹が空いていたせいもあって、ペロリと完食。

          上から南ヶ丘牧場の「お食事処 庄屋」とのどかな牧場風景→

 こちらの牧場では、国内で200頭ほどしかいないと言われる「ガーンジィ牛」(イギリス・チャネル諸島のガーンジィ島原産)を飼育しています。その希少牛から絞られるミルクは、ほんのりクリーム色の「ゴールデンミルク」。乳脂肪分や蛋白質、無脂固形分が豊富なこの高級ミルクを使って、さまざまな商品も販売されています。

 この濃厚なミルク、何とか買って帰ろうかと思ったのですが、大きい瓶しか売っていないので、泣く泣く断念。アイスクリームやミルクジャム、スモークチーズなんかは通販でも買えるようです。こちらの名物として先にも挙げたペロシキ(ピロシキ)が有名なのですが、なぜここで作っているかというと、創業者がかつて満蒙開拓団に参加していたのですが、ソ連の対日参戦で命からがら帰国、満州の人から作り方を教わったピロシキをのちに商品化したそうです。きっと創業者の方には「ピロシキ」ではなくて「ペロシキ」と聞こえたのでしょうね。

 宇都宮の餃子といい、戦場ヶ原で始まったいちご栽培といい、こちらの「ペロシキ」といい、その背景には苦労して満州から引き揚げてきた人たちの苦難の歴史があったんですね。牧場はそんな空気を微塵も感じさせずに、ただただの〜んびりしていますが…。

 さて、今回の「古都逍遥」いかがでしたか? 都心から意外なほど近い場所に、たくさんの癒しスポットがあるんですね。宇都宮、日光、那須の3箇所に限らず、栃木には以前このコーナーでご紹介した足利市や栃木市、鬼怒川、塩原、湯西川といった温泉地も豊富です。忙しい方でも日帰りで楽しめますから、皆さんも一度訪れてみては? <次回をお楽しみに>