第ニ章:一度は行きたい京のカフェ

京都人はハイカラがお好き?

 浴衣からパロレッタの爽やかなワンピに着替えて、二日目の日中は京都のカフェ巡り。京都のコーヒーが美味しいという話は、たびたびこのコーナーでもご紹介していますけど、レトロな純喫茶から食事メインのカフェまで、お店の数もバリエーションも豊富。

 2014年の統計を見ると、人口10万人あたりの喫茶店店舗数で京都府は全国都道府県中8位。では、1位はどこかというと、意外なことに高知県なんですって。コーヒーやお茶よりお酒を飲んでいそうな気がしますけど…。そして、総数では大阪府がダントツの9337軒。京都は2393軒で7位。

 このランキングで驚いたのは、上位12位までが、中部地方の福井県を除いて、四国、近畿、東海地方で占められているということ。この現象をコーヒー業界では「西高東低」と言うらしいのですが、いったいなぜなんでしょうね。コーヒー文化発祥の地である近畿や、独特の喫茶文化を持つ東海はわかるのですが、四国はど〜して? この謎解きは今後の宿題にするとして、コーヒーに関して京都府が全国一というのが、実は「消費量」。一世帯あたり一日で、9.39グラム(インスタントコーヒーに換算して4.7杯)消費するのだとか。単純計算では、4人世帯だったら、家族全員が毎日必ず1杯以上飲んでいるということ。

←写真上から「カフェ 火裏蓮花」のBピラフ、カフェの外観

 逆に、喫茶店件数で上位の高知、岐阜、愛知、和歌山、大阪はの消費量(1日あたり6.45g)は全国平均以下ということで、喫茶店の数の多さに比例してコーヒーに関しては「外飲み」の割合が多いことがわかります。そう考えると、喫茶店の数も消費量も多い京都に暮らす人たちは家でも外でもコーヒーを飲んでいるということになりますから「どんだけコーヒー好きなんだ!」って言いたくなりますよね。京都はパンの消費量でも全国1位なので、パンとコーヒーは京都人にとって欠かせないもののようです。これも「京都=和の代表」というイメージからすると意外でしょ? 昔風に言えば、京都人はコテコテの和風よりも「ハイカラ」や「モダン」がお好みなのかも。

 と、そんな話をする割にはコーヒー通でもなんでもないワタシ。巡行見物を終えてお腹が空いてきたので、コーヒーよりランチを求めて本日最初のカフェへ。御池通から柳馬場通を下がる(京都っぽいでしょ。北方面が上ル、南は下ル)と、姉小路通より手前に、よほど注意していないと通り過ぎてしまう目立たない路地(ろうじ)があります。この路地に入ってすぐのところにあるのが「カフェ火裏蓮花 (カリレンゲ)」さん。

良いカフェは路地にあり

 この路地というのがクセもので、東京では家と家の間の細い道をすべて路地と呼んでいますが、京都の場合、行き止まりになっていて、通りの入口に家の数だけ表札が掛けられているのが路地(ろうじ)。次の通りまで抜けられるものを辻子(ずし) と呼んで区別しています。京都初心者の場合、路地かと思ったら辻子だったり、辻子かと思ったら路地で、思わず引き返すなんてことがよくあるそうです。

 どっちにしても路地や辻子のあるところはたいてい一般の民家が並んでいて、基本的に観光地ではないので(区画ごとリノベーションして観光地化している場所もあります)勝手に入っていかないよう、注意して下さいね。

 火裏蓮花さんの場所がわかりにくければ、「京の宿 石原」を目指していけば、路地はその北側、鰻屋さんの脇にあるので、間違いないかと思います。このお宿、黒澤明監督の常宿だったんですって。京都って、至る所に文化の匂いがしますよね。ワタシもそこに泊まればいい脚本書けるかも。エヘヘ。

写真上からサロン・ド・ロワイヤル 京都店、旧立誠小学校、築地、ソワレ、フランソア喫茶室→

 この火裏蓮花さん、いかにも京都の町家カフェという佇まい。店名からしてランチはカレーかと思いきや、カレーはメニューにはなくて、その代わりBピラフというカレーのようなものがあるとのことで、早速注文。結局ピラフなの? カレーなの?といろいろ想像していたら、目の前に現れたのはピラフというよりはカレーに近い感じ。でも、一口食べてみるとどちらでもない味。むしろハヤシライスとかビーフストロガノフに近い、そう、デミグラスソースの味。これは大当たり、凄く美味しい。ドリンクメニューから選んだ「橘ジュース」も美味。これはかき氷にかけるシロップをジュースにしたものなんだとか。

 こちらでは夏のかき氷も有名なんですね。但しメニューにはかき氷ではなく「けづり氷」と書いてありますが…。「今様甘づらの白きに」とか「富士の高嶺」とか、ネーミングにもただならぬこだわり。写真を見ると凄いボリュームなので、注文する際は覚悟した方がいいですよ。

 お店から一歩外に出ると、午後の強烈な陽射し。きょうも一日猛暑日です。さっきのかき氷食べれば良かったかな、なんてちょっと後悔しながらも、我慢我慢。暑い中を歩いてこそ、カフェは都会のオアシスになるのです。

 姉小路を東に向かって、寺町通のアーケードを上がり、御池通から木屋町通へ。高瀬川を横に見ながら、またまた見過ごしそうな路地を入っていくと、その突き当りが「サロン・ド・ロワイヤル 京都店」さん。看板が出ていないのでかなりわかりにくいのですが、扉を開けるとそこは別世界。チョコレートの甘い香りに包まれます。

 さぁ、デザートタイム! 大きなショーケースの左側には美しいチョコレート、右側にはカラフルなケーキがズラリ。さらにイートインスペースの奥には鴨川を望むテラス席ならぬ川床(ゆか)席が…。

 ショーケースからお好きなケーキを選んでくださいということであれこれ眺めていたら、今の季節はこんなメニューもありますよと渡された写真がなんとフラッペ! それって日本語でかき氷じゃないですか。メニューは2種類、赤いルージュと黄色いジョーヌ。どこまでオシャレなんだろ。

 パイナップルのコンポートにミルクアイス、エキゾチックフルーツのソースを楽しんだ後、最後にチョコレートソースで味を変えて召し上がれという、例えは悪いけど鯛茶漬けみたいな凝ったかき氷、じゃなくてフラッペ。あ〜、食べるのがもったいないほどキレイ。結局食べましたけどね。

 川床の席は、日中は暑すぎるので夕方4時から。陽射しが少し和らいだ頃、川風に吹かれて食べるフラッペもいいんじゃないかなぁ。チョコレートは油断しているとすぐに溶けちゃいそう。

レトロ喫茶で時間旅行

 オシャレなスイーツで気分をリフレッシュした後は、高瀬川沿いに桜並木の続く木屋町通を下がって行きます。三条通を過ぎると左手には飲食店が立ち並ぶ木屋町の歓楽街、しばらく歩くと、今度は右手に歴史を感じさせる古い校舎らしきものが見えてきます。こんなオトナ向けの場所に学校? 実はこれ、1927年に完成した鉄筋コンクリート造の旧立誠小学校。石橋を渡って玄関を入ると、すぐ目の前にある旧職員室がトラベリング コーヒー (TRAVELING COFFEE)。

 学校カフェって全国に結構あるらしいのですが、こちらは本当に昔のまんまという感じ。ガランとした空間に黒板と古い椅子、年代物のテーブル。何よりも匂いが学校の匂いそのもの。全然飾り気が無いけど、放課後の開放感みたいなものがあって妙に落ち着くんです。

 実はここ、歴史の証人でもあるんです。フランスのリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明してから2年後の1897年に、日本初の試写実験が、当時京都電燈(現・関西電力)があったこの地で行われたことから、「日本映画原点の地」とされているそうです。そんな縁もあって、校舎内にはミニシアターがあって、ほぼ毎日映画を上映しています。

 ここで一日、学生時代を懐かしんでボ〜っとしているのもいいのですが、まだお仕事中だということを忘れてはいけませんよね。そんなわけで、お次は京都を代表するレトロ喫茶を3軒続けてご紹介します。まず初めに昭和9(1934)年創業の「築地」さん。なぜ京都に築地? 喫茶じゃなくて鮮魚居酒屋じゃないのかなんて声も聞こえてきそうですが、築地は築地でも、日本の新劇運動の拠点だった築地小劇場が店名の由来。木屋町通と河原町通の間、四条通に至る一本手前の裏道にあります。

 年季の入った調度品といい、クラシック音楽といい、京都の中心部にあるのに雰囲気ははもう、完全にヨーロッパのアンティークショップ。日本で初めてウインナーコーヒーを供したお店というのもうなずけます。その「築地」さんのすぐ近く、高瀬川沿いにひっそりと佇む山小屋風の建物が「ソワレ」さん。こちらは昭和28(1948)年創業。ブルーの照明に浮かび上がるカラフルなゼリーポンチと東郷青児デザインの食器で有名です。最近は外国人旅行者も訪れ、喫茶というより、もはや観光地の趣。

 そして最後は、四条通を過ぎて木屋町通より一本西側、高瀬川の右側の細い道に面した「フランソア喫茶室 (Salon de the FRANCOIS)」さん。HPには「画家であったフランソア・ミレーから名前を付けたというフランソア喫茶室は昭和9年創業の喫茶店で、イタリアバロック様式の内装で豪華客船のホールをイメージ」とあります。ベロア調の赤い椅子がすてき。壁には本物の名画がズラリ。BGMはもちろんクラシック。

初ものずくしに大感動

 さぁて、そろそろ日が落ちてきたので、名残惜しいけど京都とお別れ。阪急電車で一路神戸へ。えっ、JRの方が早いって? ワタシ達は現役じゃなくなっても、やっぱり電車と言えば阪急なんです。

←写真上から「菊兆 北野坂店」「SONE」の内観、外観

 神戸三宮駅に到着と同時に、早速ディナータイム。ディナーと言っても神戸ビーフとかそういうゴージャス系ではありません。ず〜っと食べたいと思いながら、なぜか食べる機会のなかった「明石焼き」です。大阪といえばたこ焼き、神戸といえばやっぱり明石焼きでしょ。

 この日ワタシが選んだのは「菊兆 北野坂店」さん。カウンターに腰を据えて、まずはいろいろ入ったみっくす焼きから。うわ〜、フワフワでおいひ〜。おいひ〜けど熱い(猫舌なのです)! それにこのお出汁がたまらん。思わず飲み干してしまいそう。でも、ちょっと味が薄いかな〜と思ってソースを塗ってみたら、これもイケる。

 こうなったら「越乃寒梅」の2合瓶、一人でいっちゃいます。えっ、灘の酒じゃないって? そんなん、よう知りまへん。

 一旦ホテルにチェックインした後、夏の夜風がワタシを呼んでいた?ので、ほろ酔い気分でジャズの街、神戸を代表する北野坂の名店「ソネ (RESTAURANT & LIVE SONE)」さんへ。実はワタシ、ジャズを生で聞くのって初めてなんです。なんだか初めてばっかりで恥ずかしいんですけど、ついでに初めてバーボン・ウィスキーもいただきました。ライブはピアノトリオに女性ボーカルというスタイル。最初はトリオ演奏、そしてボーカルが登場して華やかさが加わると、熱の入った演奏に聞き入ってしまい、知っている曲なんかを聞くとますます嬉しくなって、2ステージを思いっきり堪能しました。

 これまでそんなにジャズに興味がなかったワタシ。これからちょっと勉強してみようかな。
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