第三章:スイーツからフレンチまで〜お茶の未来

 というわけで、第3章になってやっとワタクシの本領が発揮できそうなテーマになりました。「スイーツからフレンチまで!」 あ〜、これでもう面倒なウンチクは語らなくていいのね。やっほー! 早く食べに行こ!

 まず最初はスイーツから。お茶の名産地・宇治にある超人気店「中村藤吉本店」です。安政元年創業の老舗。社長さんは代々「中村藤吉」を名乗り、現在は6代目。本業はお茶の製造・販売なのですが、平成10年ごろから抹茶スイーツの開発を始めて、今では本店のほか、平等院店、京都駅店、大阪店でお茶やスイーツを販売。大阪店以外は全店カフェを併設しています。

 そのカフェがすごい人気! 平日のお昼ちょっと過ぎに伺ったのですが、すでに行列状態。でも、お庭に帆掛け舟のように剪定された立派な松の木があったり、美味しそうなメニューを前もって見ることもできるので、待ち時間もさほど気になりません。室内の席がいいか、お庭に面したオープン席がいいか事前にリクエストもできます。

並んでも食べたい…

 「あ〜、この宇治の吹き寄せもいいし、わらび餅も食べたいな。この竹筒に入った抹茶ゼリーも可愛い! でも全部は食べられそうにないし…」そんなワタクシのひとりごとにすっかり呆れ顔のスタッフさん。その後20分ほどで名前を呼ばれて店内へ。

 結局はスタッフさんも巻き込んで「茶蕎麦(きつね)」に「宇治の吹き寄せ」と「抹茶黒蜜のわらび餅」をオーダー。茶蕎麦の上に乗った九条ねぎや、沿えられたすぐきの漬物、お茶は京番茶と、いかにも京都という素敵な演出。でも、やっぱり主役はスイーツ。中でも美味しかったのが「宇治の吹き寄せ」に入っているフワフワのシフォンケーキ。抹茶を贅沢に使ったわらび餅のプルプル感も素敵すぎます。ワタクシ、完全にはまっちゃいました。この後、シフォンケーキは日持ちがしないからと当日買わずに、日程の最終日に駅の中村藤吉まで買いに走ったり(本当はネットでも買えるんですが…)、わらび餅も無性に食べたくなって、スタッフさんに無理を言って『茶洛』という名店にわざわざ食べに行ってしまったほど。

 ちなみに、今外国人観光客の間では「空前の抹茶ブーム」なんだそうです。「キットカット」の抹茶味が火付け役になって、京都や大阪では抹茶テイストのスイーツが飛ぶように売れ、10〜12個入りの「箱買い」をする人も珍しくないのだとか。わかるなぁ、その気持ち。アラカンをご覧の皆さん、誰かワタクシを「国連マッチャ大使」に任命してくださいませんか? 必要以上に働きますわよっ! ∠( ゚д゚)/

お茶がスパイスに?

 さてさて、お次はフレンチ! お茶とフレンチって、もしかしたらミスマッチじゃない? って思ったアナタ、それは完全な間違いです。その証拠をこれからご紹介します。京都の中心部、四条通と富小路通の角にある5階建ての福寿園本店。その3階にあるのが「京の茶膳」。1階のエレベーターに乗る時から漂うお茶の芳醇な香り。壁には人間国宝、羽田登喜男さんの友禅が飾られ、最初に置かれたお皿も一枚一枚手書きの“美術品”。総料理長は銀座マキシム・ド・パリ、京都リヨン料理長を歴任されたフレンチの重鎮・中野鉄也さんということで、いやが上にも期待が高まります。

 今回オーダーしたのは軽めのディナーコース。最初にいただくのが小さなお茶碗に注がれた食前酒ならぬ食前茶。これが「水出し」の濃厚な玉露で、お茶本来の香りや深い味わいを堪能できます。前菜は「自家製サーモンマリネとケイパーのサラダ仕立て」。ここで突然「お好みでふりかけてお召し上がりください」とまるでスパイスのようにテーブルに置かれるのが煎茶、碾茶、抹茶という3種類のお茶。

 これは始めての体験。こういうお茶の使い方もあるんですね。お茶好きにとっては夢のよう。ワタクシも夢中になって、いろいろ試しちゃいました。続いてかぼちゃのスープ。これもクリーム代わりにかけられたお茶のソースがポイント。そしてメインの「オーストラリア産仔牛のステーキ スペシャルマスタードソース(本当はフォアグラのソースなのですがワタクシが苦手なので…)」「宇治茶を使った 季節のデザート」と続きます。最後に「一口菓子」と「抹茶、またはほうじ茶のカプチーノ」でほっと一息。

 そんな料理、食べてみたいけど京都じゃなかなか行けないわよねぇ、とお嘆きのアナタ、大丈夫です。東京駅にも「グランルーフ店」があるんです。さすがに本店のゴージャスな雰囲気は味わえませんが、アラカン世代の方にぴったりの胃にも舌にも優しいフレンチ。お気軽なランチも楽しめますよ♪

 ここでちょっと、お茶には関係ないのですが、今回の取材でお邪魔した素敵なお店をご紹介します。まず最初は祇園の超人気店。前を通る度にその香ばしい匂いにつられて、ついつい焼きたてを買ってしまうみそだんご。大阪や兵庫に70店舗近くある関西人のソウルフードショップ『おはぎの丹波屋』さんです。何と言ってもこのおだんご、諸物価高騰の折、一本120円ですもの。おはぎも一個120円。珍しい青のりのおはぎもあるんですよ。京都観光に疲れて、食事に出かけるのが面倒になった時は、ここのおだんごとおはぎを買ってホテルの部屋でのんびり、というのもいいかも。

あのイケメン俳優に会えるかも

 そしてアラカン編集長のおすすめ、先斗町の三条寄り(歌舞練場の隣)にあるおばんざいの店『ひめごぜん』。お店を切り盛りする木谷さん(女性)、田島さん(男性)のコンビは料理はもちろん、会話も絶妙。木谷さんは古くからの宝塚ファンだそうで、ワタクシの知らない昔のことまで御存知だったのにはビックリ。加えて木谷さんは、アラカン編集長も舌を巻くほどの“歴女”でもあるんですよ。厨房を担当する田島さんはかつて京都チャンネルで料理コーナーを担当、あの料理上手なイケメン俳優◯◯も◯み◯さんが弟子入り?するほどの腕前。

 ちなみにそのイケメン俳優さんは背が高すぎてお店のトイレに入ろうとして頭をぶつけたそうです。ファンの方は、ぜひ行って確かめてくださいね。運が良ければご本人にも会えるかも。それに、宝塚関係者の皆様、このお店は本当に何を食べても美味しいですよ。カウンターにずらりと並んだおばんざいを見たら、食いしん坊でなくとも全部食べてみたくなるはず。京都に行ったら、「よーじ屋」さん(のイラスト)似の京美人、木谷さんのお顔を見に『ひめごぜん』には絶対に行くべき。あっ、そのときには「舞風りらの記事を見た」って言ってくださいね。

イギリスではティーバッグ?

 話をお茶に戻して、最後はいよいよワタクシの大好きな「紅茶」のお話。なぜイギリスでは紅茶が主流になったのかという疑問についてまだお答えしていませんでしたよね。イギリス人が中国からお茶を持ち帰ったというのは日本と同じなのですが、日本のように土地が肥えていないイギリスはお茶の栽培には不向きで、その分酪農が盛んでした。

 さらに、イギリスの水は硬水が主流なので、発酵させない緑茶や半発酵の烏龍茶には不向き。その代わり完全発酵の紅茶とは凄く相性がいいんですって。それで誕生したのが、国産のミルクと紅茶をカップリングさせたミルクティー。

 イギリスでは、最初はお茶の葉をほとんど中国から輸入していたのですが、1823年にインドのアッサム地方でアッサムチャが発見されると、インドやスリランカが紅茶生産の主流になりました。「イギリス人は毎日のアフタヌーンティーのためにインドを植民地化した」という例え話は有名ですよね(実際には紅茶よりも綿や香辛料の方が主体だったのですが)。現在では意外にもイギリスよりもアイルランドのほうが紅茶の消費量は多いそうです。それに皆さん知ってました? イギリスで消費される紅茶は90%以上がティーバッグなんですって。ポットで優雅に淹れるイメージがあったのに残念。むしろ一般のイギリス人は、優雅というよりも水代わりに「ガブガブ」飲むのが普通なんだそうです。

 さて、所変わって、紅茶の専門店もたくさんあるのが京都。そう、日本茶ばかりじゃないんですよ。それに、全国で一番コーヒーにお金を使うのも京都なんですって。ちょっと意外でしょ。そんなわけで早速紅茶専門店を探訪。まず最初に伺ったのが晴明神社から徒歩5分ほどの『町家紅茶館 卯晴(ウハル)』さん。いかにも京都らしい、町家をリノベーションしたお店。靴を脱いで急な階段を上がると、可愛らしいちゃぶ台(お釜の蓋を改造したものだそうです)と座布団が。こちらではさまざまな種類のフレバーティーが用意されていて、注文前に茶葉の入った小さなビンで香りを確かめることができます。ワタクシはストロベリーティーを注文。ホンワカした空間の中で、しばし、時を忘れたのでした。

お茶文化はまだまだ深い

 次にお邪魔したのが六角通と麩屋町通の角を少し南に下ったところにひっそりと佇むイギリス風のお店『ミス・デイジー』さん。すぐ近くには蔦の絡まるクラシックな洋館(登録有形文化財)の『革島外科病院』があります。こちらのお店は内装もご主人も?イギリス風。オーダーしたのは紅茶とスコーンのセット。イギリスではこれを「クリームティー」と呼ぶそうです。これに対して、スコーンの他にサンドイッチやケーキなどが2〜3段重ねのティースタンドに盛られるのが「アフタヌーンティー」。

 種類も豊富な紅茶はポットでいただけます。スコーンにはホイップクリームではなく、クロテッドクリームにブルーベリージャムが付いた正統派。スタッフさんがご主人に「紅茶って何度ぐらいのお湯で淹れるのがいいんですか?」って聞いたら「熱湯で大丈夫ですよ。むしろ紅茶以外の方が難しい。コーヒーは80度、煎茶は70度、抹茶は60度。80度ぐらいまではすぐに下がるんですが、そこからがなかなか下がらない」

 なるほど〜、温度かぁ。普段何気なく飲んでいる飲み物でも、いろいろと奥が深いのね。そう考えると、お茶を育てる人、収穫する人、加工する人、管理する人、運ぶ人、売る人、そして最後に淹れる人…。たくさんの人の手を経て、想像を絶する手間をかけて、初めておいしいお茶がいただけるのね。感謝しなくちゃ。

 さてさて、今回の舞風りらの「都のお茶文化」リポート、いかがでしたか? 本物のお茶好きさんにはちょっと物足りなかったかもね。でも、京都はこれからが本当の観光シーズン。歩き疲れたら、今回ご紹介したお寺やお店にも足を止めてみてくださいね。京都のお茶文化はまだまだ深いですから、そこで何か新しい発見があるかも。<次回へ続く>