第一章:聖夜までのプレリュード

 季節ごとにテーマを決め、ゆったりしたスケジュールで古都を歩く。日本の原風景を求めて…。そんな旅こそ“アラカン世代”にふさわしいのではないだろうか。第8回目は、クリスマス特別企画として、初登場!宝塚歌劇団の元男役スター・扇けいさんと歩く港町・横浜。

イルミ好きではあるのですが…

 はじめまして。扇けいと申します。「あれ? 今回は舞風りらさんじゃないの?」と思った皆様、ごめんなさいね。この季節、舞風先輩はディナーショーの出演などでお忙しいので、今回は私が代わりにこのコーナーを担当させていただくことになりました。

 “先輩”と書いたのでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、私も宝塚の出身なんです。宝塚時代の芸名は『扇めぐむ』。男役として花組に所属し、2012年に退団。その後心機一転、芸名を「けい」に改めました。2013年には韓国のミュージカル『王の国』に出演させていただき、第21回大韓民国文化芸能大賞・ミュージカル部門・外国人特別賞を受賞いたしました。まだまだ未熟な私ですが、舞風先輩ともども、よろしくお願い致します。

 ところで今回いただいたテーマは“中高年がクリスマスデートに使える横浜イルミネーション”。「アラカン世代が夫婦で、あるいは親子で、もしかしたら歳の離れたカップルで過ごすクリスマスにふさわしいキラキラしたロケーションを横浜で探してくるように」という編集長の命令で、イルミネーションは大好きなのですが、あまり横浜に詳しくない私がレポートすることになりました。大丈夫かな? (・・;)

 いまさらですけど、もうすぐクリスマスですよね。東京都心も華やかなイルミネーションでいっぱい。私も先日、話題の中目黒“青の洞窟”に行って来ました。幻想的ですごく綺麗だったけど、前に進めないくらい人でいっぱい。いったん中止になったのも納得の混雑ぶりでした。その点横浜は「中目黒みたいに狭くないし、各スポットが適度に離れているから大丈夫」(編集長)とのこと。

 そうこうしているうちに取材当日。夜景を楽しむにはちょっと早めの午後3時30分に山下公園の向かい、「人形の家」1階にある「カフェエリオットアベニュー」でスタッフさんと待ち合わせ。この日はお天気は良かったのですが、風が強くて真冬の寒さ。バリスタさんが淹れてくれる美味しいラテが体を温めてくれます。

“お国柄”を楽しむ

 まず最初に向かったのが、人形の家からも歩いて行ける山手。こちらには7つの西洋館があって、それぞれがテーマ国を決めて、そのお国柄を反映したクリスマスの飾り付けをしているそうです。しかも入場無料!(カフェ等を利用の際には料金がかかります)このイベントは『横浜山手西洋館 世界のクリスマス2014』といって、開催期間は12月1日から25日まで。しかも、ふだんは17時閉館ですが、12月20日から24日の間は開館時間を19時まで延長しています。

 まず最初にお邪魔したのは「横浜市イギリス館」。山手のシンボル、港が見える丘公園の敷地内にあります。こちらは昭和12(1937)年に英国総領事公邸として建てられたもの。現在は横浜市が取得し、コンサートや会議などに利用されているそうです。なお、2階展示室と復元された寝室の一般公開は今年が初めてなので、今回の取材はグッドタイミング!

 クリスマスリースが控えめに飾られた玄関を開けて中に入ると、いかにも英国風のシックな佇まい。派手さはありませんが、高級感のあるインテリアです。2階の寝室に上がれば、そこは子供の頃夢見たクリスマスそのもの。暖炉には手作りの刺繍入り靴下が飾られ、その下にはプレゼントの包みが。ベッドにはタータンチェックのカバーがあって、ベッドサイドにはもちろんティーセット。

 ダイニングテーブルの飾り付けも素敵。赤いテーブルクロスと赤いキャンドルが気分を盛り上げます。部屋の隅に飾られたごく普通のツリーも、アットホームな雰囲気で、家族みんなでひとつずつリースを飾る幸せな光景が目に浮かびます。映画のワンシーンで出てくるハッピーなクリスマスってこういう感じですよね。なんだか最初から気分が盛り上がっちゃいました。(^^♪

名建築家の“作品”

 興奮冷めやらぬまま次にお邪魔したのが「エリスマン邸」。シーベルヘグナー商会という生糸貿易商社の横浜支配人だったフリッツ・エリスマン氏の邸宅として、大正14(1925)年から15(1926)年にかけて建てられたもの。設計は「現代建築の父」といわれるアントニン・レーモンド氏。建築関係には全く素人の私ですが、私なりにいろいろ調べてみると、レーモンド氏は有名なフランク・ロイド・ライト氏のお弟子さんで、チェコの出身。帝国ホテル建設のために師匠と一緒に来日。その後日本に留まって数々の名建築を残したそうです。

 東京女子大、聖心女子学院、上智大学、南山大学といった学校や聖路加国際病院の旧病院棟、日光にある旧イタリア大使館日光別邸など現存する建物も多く、一般にはあまり知られていませんが、横浜では伊勢佐木町にある不二家のビルやKRCビル、ライジングサン石油会社ビルといった近代的なビル建築もレーモンド氏の設計だそうです。

 エリスマン邸は昭和57(1982)年にマンション建築のため一時解体されましたが、平成2(1990)年に現在の場所に移築されました。なんと、椅子やテーブルといった家具もレーモンド氏の設計なのだとか。こちらのテーマはイタリア共和国(アッシジ) 。イタリアのクリスマスっていうと陽気でカラフルなイメージだったのですが、中に入ると全然違っていて、控えめでとてもシック。さすがローマ法王のお膝元ですね。

大晦日に赤い下着?

 “イタリア通”の方にお聞きしたら、イタリアではクリスマスは自宅で過ごすのが一般的で、飾り付けも日本ほどではないそうです。しかも、サンタさんだけではなくて、ベファーナという魔女がプレゼントを持ってきてくれるんだとか。しかも、当日ではなくて翌年の1月6日。面白いですね。

 そして、イタリアでのクリスマスといえば、特徴的なのがプレゼピオというキリスト降誕を再現したミニチュア。もちろん、ここでもツリーの隣にありました。あれ? 肝心のキリストがいない、と思ったら、イブまでは藁のベッドは空になっていて、25日の0時きっかりに赤ちゃんの人形を寝かせるんだそうです。

 ちなみに、イタリアでは大晦日には赤い下着を着けると幸せになるという言い伝えもあるんだとか。なんだか巣鴨のおばあちゃんみたいですね。エリスマン邸の2階には以前3つの寝室があったそうですが、現在は山手の洋館に関する資料を展示するスペースになっています。かつて厨房だった場所は現在喫茶コーナーになっているので、ここでひと休みして夜を迎えるのもいいですよね。

 エリスマン邸を出る頃には、夕暮れが近づいていいムード。外の灯りも徐々に灯り始めて、玄関脇のスノーマンも存在感がアップ。今回お邪魔したのはイギリス館とエリスマン邸の2箇所でしたが、他にもこの近くに「山手111番館」「山手234番館」「ベーリック・ホール」、ちょっと離れますが「外交官の家」「ブラフ18番館」といった西洋館があって、期間中、それぞれ趣向を凝らした飾り付けで楽しませてくれます。

 他にも「山手十番館」「えの木てい 本店」といった洋館のレストランや喫茶もあるので、ここで早めのディナータイムというのもいいですよね。あっ、そうそう、この季節だと晴れていれば外人墓地越しに富士山が見えますよ。横浜で富士山って、ちょっと得した気分になりません?
<第二章へ>