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マスコミが宣伝する「期待の新作」は価格相応なのか? だまされないアラカン世代を自負する編集部員が自腹で検証!
一時ほどではないにせよ、付録付き雑誌・ムックの売り上げが好調をキープしている。デアゴスティーニのような雑誌付き付録?も含め、大型書店では一定の売場を設け、販売に力を入れている。中には即日完売というケースもあり、出版大不況の現在、出版社にとって唯一の救世主になっているのが現状だ。
その多くは、ブランドのロゴが付いたファッション小物が多いようで、20〜30代の女性がメーンターゲット。但し、内容は「100円ショップかせいぜい300円ショップの商品にブランドのマークを付けただけ」という代物が殆どで、ベストセラーとなった美容ゲルマニウムローラーやレンジ用のスチームケースのような実用性、値頃感には乏しい。
20代〜30代の男性向けには、限定フィギュア付きといったヒット商品もあるのだが、アイテムの決め手に欠き、なかなか難しいようだ。そんな中で異彩を放っているのが、音楽之友社のオーディオ月刊誌「stereo」2013年1月号だ。
何とUSB-DAC付きのヘッドフォンアンプ(型番LXU-OT2)が付いているのだ。何のこっちゃ?と思った人にだけ説明しよう。パソコンにCDのデータを読み込んだり、音楽配信データをダウンロードして、パソコンで音楽を聴くというユーザーが増えているが、パソコンに内蔵されたDAC(デジタル・アナログ・コンバーター)、つまりデジタルデータをアナログに変換する装置は必ずしも良い音質とは限らず、ノイズも多い。
そこで、ちょっとしたオーディオ通なら、パソコンからデジタルデータだけを取り出して、外部のDACで処理する方法を選ぶ。ノイズも減り、よりクリアな音質になるからだ。その際、デジタルデータはパソコンの設定でUSBから取り入れることができる。これをUSB-DACという。
USB-DACは、中国製の安価なものから百万円クラスの超高級品までピンキリだが、概してオーディオ専門メーカーの製品は5万〜20万クラスのものが殆どだ。ところが、この付録は日本の高級オーディオメーカーであるラックスマンが設計・製造した正規の商品で、それが雑誌込みで2,800円で買えるのだから驚く。
ただし、ケース等はなく(別売)裸の基盤のままである。しかし、足と簡易カバーを取り付ければそのまますぐに使えるので、機械音痴の人でも困ることはない。当然、パーツなどは安物ではあるが、そこはさすが専門メーカー、付録でもキチンとしたバランスの良い音を出す。
もちろん、過度な期待は禁物。アンプの出力が非力なため、高級ヘッドホン(高インピーダンスのものが多い)は鳴らせない。しかし、筆者が愛用している高CP製品、韓国製のCRESYN C515H(アマゾンで送料込み1,527円)でも、十分納得できる音を出す。トータルでは数万円クラスと言っていいだろう。
ちょっと工作できる人なら、100円ショップで売っている容器や汎用ケースを加工して、オリジナルケースを作ってみてもいいだろう。ボリュームノブなどは秋葉原のパーツショップで数百円で売っているので、交換すればグッと見栄えも良くなるし、電気に詳しい人ならオペアンプを交換して、音質の違いを楽しむこともできる。
「stereo」誌は、以前も同型のラックスマン製デジタルアンプや、フォステクスのスピーカーキットを付録にしてヒットさせている。
このヒットに対抗?してか、ステレオサウンドの別冊DigiFi(デジファイ) 7号では、USB-DAC付きデジタルアンプを付録にして完売(写真)。こちらのアンプは新興メーカーのOlasonic(東和電子)によるなかなかの力作。パワーも十分で音質でもラックスマン製の付録に引けを取らない。
こうした企画はメーカーと共同で、シニア層をオーディオの世界に呼び戻す効果も狙っているのだろうが、実用性、価格、内容、カスタマイズできる楽しさなど、トータルでのコストパフォーマンスは特に高いと言えるだろう。敢えて苦言を呈するなら、すぐに売り切れてしまって入手が困難なことと、雑誌が要らないことぐらいか(それを言っちゃぁオシマイだが…)。